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July 28, 2015

 『ラグビーエッセー選集 人類のためだ。』藤島大(鉄筆、15年7月31日刊)

<書評> 
『ラグビーエッセー選集 人類のためだ。』藤島大(鉄筆、2015年7月31日刊)
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いきなり目次は叫ぶ。
「夏」反戦とスポーツ。
君たちは、なぜラグビーをするのか。それは「戦争をしないため」だ。
「体を張った平和論」で著者はこう記した。
1987年1月の早稲田大学最終講義。
26年前、元日本代表監督、スポーツ哲学者の故・大西鐵之祐さんは話した。
「わたしは(略)8年間戦争にいってきました。人も殺しましたし、捕虜をぶん殴りもしました。そのときに、こうなったら、つまり、いったん戦争になってしまったら人間はもうだめだということを感じました。
敵対する者の間には、ひとつも個人的な恨みはないんです。
向こうが撃ってきよるし、死んじまうのは嫌だから撃っていくというだけのことで、それが戦争の姿なんです」

戦争に突入する前に闘争的スポーツを通じてフェアプレイを体現して、どんなに勝ちたくともここを踏み越えてはならない、という倫理を身につけた者たちが「グループをつくる」。
そのグループを「社会の基礎集団・社会的勢力」として「戦争をさせないための人々の抵抗の環」とするのだ。
大西氏は最後にこう締めくくった。
「私たちは、平和な社会をいったんつくり上げたのですから、戦争のほうに進ませちゃったら、戦死したり、罪もなく殺されていった人々、子供たちに、どうおわびするのですか」
このエッセーの最後。著者はこう締めくくった。
「明日の炎天下の練習が憂鬱な若者よ、君たちは、なぜラグビーをするのか。
それは『戦争をしないため』だ」

エッセー集「人類のためだ。」は藤島大さんが「ラグビーマガジン」「別冊ラグビークリニック」「J SPORTS」「SUZUKI RUGBY『友情と尊敬』」「ナンバー」「ラグビー特別便」などに書き綴ってきたコラムから鉄筆の元ラガーマン渡辺浩章さんが50篇を選び主題別に再構成して刊行した。

「夏」に続く「秋」。
テーマは、今年9月にイングランドで始まるラグビーワールドカップにつながる「ワールドカップの季節」だ。

著者がこれまでワールドカップ取材で体感した素直な言葉が読み取れる。
「飲んで肩抱き合って」では「観客席の文化に関しては『ラグビーはいいな』とW杯取材のたびに思う。喉が乾いたらビールを自由に流し込み、隣の席の『敵』とそのまま近くの酒場で延長戦に励める」
「昨今は日本の試合に『応援席もどき』が存在する。早明戦で国立競技場のそれぞれのゴール裏に両校のファンを振り分けようとした。企業職の強いトップリーグもどうしても固まる。強制ではないにせよチトさみしい。それはラグビーではない」

「冬」。「勝者と敗者の季節。負けましておめでとう」
「春」。「出会いと別れの季節」

そして「鉄」という主題がある。「東伏見から吹く風」。早大ラグビー部のかつての本拠だ。
「鉄」には大西鐵之祐さんへの追悼エッセーも入る。

7月26日、難病に侵され闘病の末に逝った上田昭夫さん(元慶應大監督)の通夜。
大さん(ふつう私は大さんと呼ぶ。1986年度のラグビー取材で一緒に東松山市の大東文化大グラウンドなどを駆けずり回っていたころの知り合いのため)と訪れた。
会場はカトリック東京カテドラル関口教会。山手線目白駅からバスで10分ほど。しかし通夜で献花を終えてバス停に行くと長蛇の列。1300人が訪問したのだから15分間隔に来るバスでは賄いきれない。
「途中、タクシーが来たら乗ろうか」と話しながら昼間は35度を超えた猛暑日の夜、駅へ向かう。
「上田さんは勝負師だった。いつか日本代表を担当して欲しかった。それにしても上田さんの盟友・石塚さん(武夫氏。慶應で上田さん主将、早大で石塚さんが主将)らラグビー界のいい人は早く逝ってしまう」など話ながら。
しかし空きのタクシーは通らず。駅へ着いた。同時にバスもやって来た。

こんな時はいつも通りの行動、ラグビー取材時と同じく冷房が効いた店でアルコールを頂く。
2軒目を飲み終え駅に向かう際に大さんが「FBやブログで紹介して」とこの本をカバンから取り出した。
書評もどっかの新聞に書く大さん。
私は新聞記者時代からなるべく書評と亡くなった方の追悼文は避けてきた。
文章力が分かってしまうものね。

気持ちが変わったのは「夏」の主題を読んで。
「安保法案」。日本は戦後70年を迎えて大きな一歩を踏み出した。
国民の反対の声を聞かず政権は判断した。
大西さんが危惧したままの国へと進んでしまっている。

そういえば最近、教育現場で教員を悩ます話題に親たち=モンスターペアレンツの存在がある。
楕円球と遊ぶ子供たちの親にはいないと信じたい。
今の政情をモンスターペアレンツはどう見るのか興味がわいた。
自分の子供のために自己主張を繰り返す。
きっと愛おしい自分の子供が戦争に駆り出されるような事態や法案には反対するだろうな。
学校に要求して学校から声をあげる勢力にならないかな。
それとも駆り出されないような裏道を探すのか?でも権力がそんなことは許さないたぶん。

ラグビーマガジン9月号(7月25日発売)。
日本ラグビー協会会長を退いた森喜朗元首相がインタビューを受けている。
早大ラグビー部に入部する前に大西さんの世話になっている。
そして部を辞める際に大西さんはこう話したという。
「いまに偉くなってラグビーの面倒をみろ。ラグビーの世話をしろ」
現政権に影響力を持つ森さん。
冒頭の大西さんの言葉を具現化してラグビーの面倒をみてもらうために本書を読んでもらいたいな。

ラグビーファンの多くの方が本書を手にとってほしい。
(鉄筆、¥1,600+税)

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Comments

鉄筆の渡辺浩章です。
『人類のためだ。』ご紹介いただき、ありがとうございました。
気づくのが遅くて、申し訳ありません。

Posted by: 鉄筆・渡辺浩章 | August 12, 2015 at 10:55 AM

鉄筆の渡辺浩章です。
『人類のためだ。』ご紹介いただき、ありがとうございました。
気づくのが遅くて、申し訳ありません。

Posted by: 鉄筆・渡辺浩章 | August 12, 2015 at 10:59 AM

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